長崎中材業務研究会

『 中材業務における質の向上と日常での不安や疑問点の解決の場所を提供する 』をもとに、セミナーを通じて皆さんと学び、意見・情報交換を行いたいと思っています。

第19回セミナー質疑応答

第19回質疑応答
 
洗浄・滅菌、中材スタッフの感染対策
 
Q1、大学病院など大きな病院では洗浄機や、滅菌物がそろっていて、経済的な面からもガイドラインに沿った作業が可能だと思います。
当院には洗浄機、ACEOGがありますが洗浄度試験などはできません。
クリニックでは経済的に難しいところがあり「これでよいのか」と疑問、不安に思います。クリニックにおける中材業務でアドバイスがあればお願いします。
A1, 洗浄機や滅菌機等、器械や設備が整っているならばガイドラインに沿った作業を。器械などがなければ、ないなりの対応を工夫する。また、セミナーなどで得た情報を提供し、言い続けることも大切。
 
Q2、超音波洗浄機にハサミを入れると切れが悪くなるといわれ、手洗いしていますが、切れ味が落ちるという根拠は?
A2, はっきりした根拠はないが、多少の切れは悪くなる。
   ウドノ医機 :超音波洗浄機は水の振動(キャビデーション)で汚れを分離させるという原理。細かい振動で切れが悪くなることはあるかもしれない。
   日本ステリ :刃物という区分では分けてはいない。
          切れが悪くなった物に関しては、洗浄後の点検ではじ
          くことが大切。研磨などで対応する。
 
Q3、ジェットウォッシャーで洗って、入れたままで翌日取り出すと器械に錆が出ていることがあり、もらい錆を減らすにはどうしたらいいですか?
A3, 翌日に取り出したため、もらい錆をしたわけではない。元々錆があるも  のときれいなものを一緒にしたことでできる錆がもらい錆。錆びた器械  を減らす、取り除くことが大切。汚れたまま、濡れたままにしておかな  いこと。しっかり乾燥させる必要あり。
   ジェットウォッシャーで洗った後は乾燥工程まで行って帰ることが理  想的。
   新しいステンレス器械では、油落としをした直後は表面に酸化被膜が  できていないため錆びやすい。感想を十分に行うことで被膜ができ錆び  にくくなる。
   キヤノン(株):ジェットウォッシャーにかけて乾燥工程まで完了し  ていても、翌日まで洗浄器が稼働していないと、機械自体が冷めていく  ので結露が発生し、高頻度に錆びることがある。できれば完了後にドア  を開けて帰ると錆びにくい。
   PS:ジェットウォッシャーの配水溝には乾燥終了後も水気が残るので   乾燥工程終了後、時間経過とともに庫内に湿気が戻ると考えられま    す。
Q4、感染管理看護師の研修会では針刺し事故で、患部を流水下で洗浄するときに血液を絞り出さないことになっている(絞り出す手を緩めた時に逆に中枢側が陰圧になり引き込む力が生じるため)ようですが、ネットで感染事故がらみの情報にはまだ末梢に向かって血液を絞り出すと表示してあります。どちらに従えばよいでしょうか?
 
A4, 流水で洗い流す方法もあるようですが、現在も「末梢で絞り出す」で表記しているものも多く、今回はこの方法を紹介しました。どちらの方法を取るのかは各施設で話し合い決めて下さい。
 
 
Q5、新品の器械の油落としの方法は?
 
A5, 新品の器材を洗浄するための専用の洗剤を使用してください。その器材 のメーカーに方法や洗剤の種類を確認し確実に行って下さい。
洗浄→(オートクレーブ)滅菌→完了
  PS:新品器材の油落とし:洗浄後、高温乾燥機で乾燥させ、油にじみが  あれば洗浄乾燥を繰り返す方法もある。
 
Q6、器械の油落としの方法は器材によって異なるのか?
 
A6長崎大学病院では洗剤を使いわけることはしていない。
熊本大学病院では病院建て替え時にそれまでの3倍の量の器械を導入。業者に全て油落としをしてほしいと希望すると納品がかなり遅くなった。「2度としない」と言われたくらいに油落としをすることは大変なこと。器械の業者に直接、油落としが必要な器械なのか、どのような油落としの方法がいいのか尋ねたほうがよい。いつも通りでよいと言われて行い、おかしければ、不都合だったところを業者に伝える。業者に確認することが一番。油は中性洗剤では絶対に落ちないので特別な洗剤が必要。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Q7、ハイスピード滅菌機はどこに置いて、いつ、どのような時に使用しているのか?
 
A7, 手術室に設置。熊本大学病院でどのようにして使用しているか3年間統計をとった。その結果、眼科の器械が多く、ディスポーサブルのものも含まれていた。その事実を情報提供すると使用量は1/3に減少し、ディスポーサブルのものも減少した。数の少ない眼科の器械や手術中に落としてしまった器械などはハイスピード滅菌を行っている。しかし、ハイスピード滅菌できるものとできないものがあるので把握しておく。
 
ウドノ医機:オートクレーブのハイスピード滅菌器について
重力置換式、卓上型、機械を包装しない裸のまま滅菌するのが原則、
乾燥なしで取り出すのですぐに使用する必要あり(2時間以内)。
包装した場合は通常のオートクレーブを使用しなければならない。
ハイスピード滅菌後は器材が高温になっているので、術野に使用する
場合、器材が冷めるのを待つ必要がある。器材を裸のまま運ぶので滅菌
器の設置場所も手術室の中もしくは近くにする必要がある。ボウィー
ディックテストはできないので、ハイスピード滅菌専用のインジケータ
BI)を使用し(1時間判定)結果を待って使用してほしい。
M(株):ハイスピード用BIは48時間、1時間判定用があり、全て外装が青色。滅菌する器材の隣にむき出しのまま置く。滅菌するものは包装しない。ケミカルインジケータを一緒に入れると色の変化で目視確認ができる。
BI(3時間用)¥440/
 
 
菅整形外科病院:基本は単品の滅菌、重力置換式の滅菌器を使用せず、真空脱気プリバキューム式の滅菌器を用いて乾燥時間を短くした工程で行っている。ショートコースの時間は約30分。※工程時間はメーカーに事前にBIPCDで確認を行ってもらい最短時間で設定している。
 
長崎大学病院(ステリ):ハイスピート滅菌機は15~20分かかる。プログラムによって異なる。設定は3種類くらいあるが、使用しているのは1種類。
 
ジョンソン&ジョンソン(プラズマ滅菌):100NXは、適合器材の種類によって異なるが、鋼製小物や内腔のない硬性鏡は1番短い工程で24分。
 
 ※いずれの滅菌方法においても、滅菌したい器材は洗浄後、十分乾燥させてから滅菌機に入れて下さい。