長崎中材業務研究会

『 中材業務における質の向上と日常での不安や疑問点の解決の場所を提供する 』をもとに、セミナーを通じて皆さんと学び、意見・情報交換を行いたいと思っています。

第27回セミナーアンケート 回答

第27回セミナー アンケート回答


【栗原靖弘先生からの回答】
 
Q    :中空のものの洗浄法。現在は用手洗浄のみで行っているが、洗浄不十分な事例もあり、超音波やWDを使用したいが、WDは専用アクセサリーが必要なため、現時点では無理である。超音波でも良いと聞くが、十分に洗浄できるか不安
A:中空のものの洗浄法で良く問題となるのが、耳鼻咽喉科吸引嘴管の洗浄です。
中部中材業務研究会島崎会長によると、材料部での洗浄までに放置してしまうと、内腔で血液等が固まって除去しにくくなるので、管状器具用洗浄装置がない場合は、使用後に吸引嘴管に水を吸引して内腔を洗浄し後外し、酵素配合洗浄剤などに浸漬して回収することが推奨されているようです。その後、材料部においてブラッシングまたは、注射器を使用して内腔を洗浄してから超音波洗浄を行う方法が紹介されています。
用手洗浄で重要なのは、内腔の直径にあった適切なブラシのサイズを選択することです。株式会社名優さんの下記の製品は、私の知る限りで最もサイズが豊富なので、ご施設の洗浄する内腔器械のサイズに合わせて、選択するといいかと思います。
そのほかクリーンケミカルさんでも、吸引嘴管の洗浄の便利グッズは販売されているので、ご参考にされてください。
 
Q:洗浄機、滅菌器の日常管理について、自分たちでできることは何があるのか。滅菌技士資格は必要なのか疑問に感じたことがあった。
A:ウォッシャー・ディスインフェクターについては、滅菌保証のガイドライン2015 23ページ2.1.7 日常および定期モニタリングと管理 (2)装置の日常点検  の項目がありますので、ここをご参照ください。
蒸気滅菌については、自施設の機種が労働安全衛生法による第一種圧力容器に該当する場合には、ガイドライン2015 76ページ 表5−8滅菌器の定期点検項目例の「定期自主点検」を必ず行わなければいけません。納品された洗浄機や滅菌器には、必ず取扱説明書がありますので、もう一度読み返してみるといいかと思います。なお、滅菌技士の資格がないと洗浄機や滅菌器の操作や日常点検ができないことは無いですが、滅菌供給業務を遂行するにあたって、基礎を固める講習が受講できますので、第2種滅菌技士の取得をお勧めします。
 
QACEOGの滅菌期限の違いが院内で昔からある。
Aガイドライン2015 150ページ 12.1.9安全保存期間について(使用期限)という項目があり、事象依存型無菌性維持(ERSM)という考え方がありますが、日本ではまだ、時間依存型無菌性維持(TRSM)で設定している施設が大半と記載されています。
香川大学医学部附属病院 材料部では「滅菌後の安全保存期間は、滅菌法・包装材・保管場所・取扱によって影響を受ける。当院では、清潔エリア(OP室・材料部保管庫)と一般エリアでの保管で、各々使用期限を決めている。」と記載がありますので、下記のURLでこの期限を参考にして自施設の使用期限を決められるといいかと思います。
 
Q:カメラの外筒の中まで見えないので、滅菌できているか不安になる。
A:ご質問内容が、滅菌器の浸透性について不安になられていると推察します。プレバキューム式の高圧蒸気滅菌・EOG滅菌・LTSF滅菌は浸透力の非常に優れた滅菌法ですので、適切な試験器具を利用して滅菌材の浸透性を確認すると安心されるかもしれません。なお、過酸化水素の滅菌法は浸透性が他の滅菌法と比較して低い方法ですので、浸透性が不安な場合は他の滅菌方法を選択するといいかと思います。
滅菌材浸透性試験器具の例は下記をご参照ください。
 
Q:病棟から何でもかんでも滅菌依頼がくるのに疑問を感じる。吸引チューブなど、使い捨てれば良いのだが、コスト面から再使用したい。チューブ類は先端だけでも滅菌できれば良いという考えで供給していいのか。
A:単回使用と思われる機材の再滅菌を病棟・外来から求められた場合は、その機材の添付文書を持参するように現場へ求めてください。リユース品であれば、その添付文書に記載された方法で再生し、単回使用品であれば再生を断ってください。断る根拠は下記の厚生労働省の通知文書です。東京医科歯科大学医学部附属病院材料部副部長 久保田英雄先生は、この添付文書を持参させる方法で単回使用品の再生を徹底的に減らしていったことが、Infection Control 20174月号23ページに掲載されています。
滅菌供給業務に勤務する皆さんは、単回使用品の再生を断る勇気を持つべきかと思います。「ご自分の家族に、その再生した単回使用品を使ってもらいたいですか?」と質問してみてください。
 
ACEOGの湿度・温度の大切さを知った。滅菌に対する知識が深まった についての追記回答。
蒸気滅菌・EOGLTSFに共通な滅菌機序における「湿度」の重要性はみなさんご理解いただけたと思うのですが、「どうせ滅菌工程で濡れるのだから被滅菌物が最初から濡れていても大丈夫だよね?」と勘違いされる方がいらしたら危険なので、下記を記載いただくと安心です。
水分によって包装材のバリア性が破綻してしまうので、滅菌器に入れる時もそうですが、出す時も被滅菌物は乾いてないといけないです。
 蒸気滅菌・LTSFにおいて、飽和水蒸気が滅菌物に触れても、水分があると温度上昇が妨げられてしまうため規定の温度まで上がらない場合があります。それによって滅菌不良が起こる可能性があります。EOGにおいても水分が邪魔して被滅菌物の表面にEOガスが均等に行き渡らなくなる可能性があります。「(過酸化水素以外の)滅菌に水分は重要!しかし、被滅菌物が濡れていてはダメ!」
 

 

【大久保副会長のコメント】
 
Q:用手洗浄の方法が分からない。
A:用手洗浄は人手によるブラッシングでの物理的作用により器材を洗浄する方法です。用手洗浄を行う際は、流水下で、流水を桶などに溜め、貯水した水面下でブラッシングを行います。流水下で直接器材を洗浄すると、汚染した水滴が飛散し、作業者や環境を汚染するおそれがあります。栗原先生も、中空の用手洗浄のところの回答で挙げられていますが、使用するブラシやスポンジなどを、器材の大きさや形状などに合わせて複数の種類を用意すると、効果的に洗浄できます。用手洗浄は機械洗浄と比べ、洗浄効果において作業者による個人差が出やすいので、各施設毎に統一した洗浄マニュアルを作成し、洗浄効果に個人差が出ないよう管理することが必要です。また無発泡の酵素系洗剤を使用した恒温槽での浸漬洗浄は、大きな洗浄器がなくても効果的な洗浄ができます。この方法も温度や洗剤の濃度・浸漬時間等、洗浄マニュアルを作成が必須です。いずれにせよ、洗浄後はしっかりとした濯ぎが必要となります。洗剤・恒温槽などの機械は取扱説明書をよく 読んでその特徴を知っておく必要があると思います。
 
 
 
QEOG滅菌で年2回の健康診断を受けなければならないが、検査項目は何をすべきか知りたい。
A:エチレンオキシドを用いて行う滅菌作業に従事する労働者を対象として、配置換え及びその後6月以内ごとに1回、定期に、一般健康診断を行わなければなりません。この健康診断の項目、結果の記録、事後措置等については、すべての労働者に義務付けられている1年以内ごとの一般健康診断の場合と同じです。(労働安全衛生規則及び特定化学物質等障害予防規則の規定より抜粋)
 
 
 
【藤原会長コメント】
今回は新年度ということで洗浄・滅菌の基礎講座になりましたが、関連企業や滅菌技師の教育にも経験豊富な栗原先生であればこその文字通りかみ砕いた講義でした。
滅菌の現場を離れている私にも理解しやすくあっという間の2時間でした。セミナー後のアンケートへも丁寧なお答えをいただき追加セミナーを受けているようで、栗原先生には重ねて感謝いたします。
ブース出展していただいた、ウドノ医機・サクラ精機・村中医療器・J&J・エムエス花王プロフェッショナルサービス各社のご協力にも感謝いたします。現場の声を製品に反映していただけるよう今後とも当セミナーへの参加をお願いいたします。
 
長崎中材業務研究会